サカナAIの立ち上げを支援した米CICが福岡に大規模支援拠点を開設 – 最大250社が参加可能

米国を拠点にスタートアップ支援事業を展開するケンブリッジ・イノベーション・センター(CIC)は、4月に東京支社に続く日本2拠点目を福岡市にオープンする。シェアオフィスには最大約250社が入居可能。CICはすでに東京の拠点で人工知能(AI)開発のサカナAI(東京・港)など有望企業を育成しており、今回の進出でスタートアップ・ハブとしての福岡の存在感がさらに高まることが期待される。

新施設「CIC福岡」は、曲がりくねった廊下と143の個室オフィスが不規則に配置された迷路のようなレイアウトが特徴だ。オフィスはすべてガラス張りで、16のミーティングルームがフロア全体に点在している。意図的なデザインで、テナント同士のコミュニケーションを促進する狙いがある。

CIC福岡の清水邦彦総支配人は、「例えば、会議室が見つからない人がいたら、廊下を歩いている他のテナントに自己紹介して道を尋ねるかもしれません。このような簡単なやりとりでも、会話が弾み、コミュニティが広がります。”

CICのグローバル展開と福岡ハブの役割

1999年にボストン地域に設立されたCICは、世界最大級のイノベーション・ハブである。2020年に東京にオープンしたCIC東京には、新興企業、大企業、ベンチャーキャピタル(VC)、地方自治体、大学など300以上の組織が入居している。

CICにとって日本で2番目の拠点となる福岡のハブは、天神にあるワン福岡ビル(以下、ワンビル)の7階に入居する。約3,500平方メートルの広さを誇るコワーキングスペースは、1人あたり月額80,000円と最もリーズナブルな価格設定となっている。

月額使用料を支払うテナントは、会議室、インターネット、プリンターなどのビジネスアメニティに加え、ニンテンドースイッチ・コンソールを備えたゲームエリアやジムなどのレクリエーションスペースも利用できる。

コミュニティ・ビルとイベント・スペース

7階と吹き抜けでつながる6階では、毎週木曜日に講演会やネットワーキング・セッションなどのイベントが開催される。また、このフロアは8階から17階のオフィススペースにつながるエレベーターロビーとしても機能し、ビルのテナントだけでなく、外部からの参加者も利用できる。

清水氏は、コミュニティ内で経験豊富なスタートアップの創業者や投資家に接することの意義を強調する。「経験者に気軽に相談したり、アドバイスを求めたりできることは、企業にとって非常に重要です。会話の機会を作ることがCICの最大の強みです」と語る。

成長する福岡のスタートアップ・エコシステム

これまで、福岡市が設立したスタートアップ支援施設「Fukuoka Growth Next(FGN)」が、地域のスタートアップ・エコシステムを牽引してきた。雇用保険適用事業所数の前年比増加率で示される福岡市のスタートアップ率は2023年度には5.3%に達し、日本の主要21都市の中で6年連続1位となった。

しかし、2012年に福岡が「スタートアップ都市宣言」をして以来、設立されたスタートアップのうち、株式公開(IPO)というマイルストーンを達成した企業はまだない。スタートアップの数は増えているが、IPOを達成できる価値の高い企業の育成は依然として課題である。

CICの福岡進出は、地元のエコシステムを後押しするものと期待されている。FGNがアーリーステージのスタートアップ支援に重点を置いているのに対し、CICは IPOやM&A(合併・買収)を出口戦略として目指すグロースステージ企業の支援に特化している

さらに、CICはボストン本社にジャパンデスクを設置し、企業の海外進出を支援している。福岡市の高島宗一郎市長は、「CICの存在は、福岡のスタートアップ支援体制に厚みを加えるだろう」と楽観的な見方を示している。

CIC福岡の今後の展望

現在、約120社が入居を検討している。また、福岡県はCIC内に資金調達や事業開発の専門家を配置した支援拠点「グローバル・コネクト福岡」を設置し、毎月ビジネスマッチング・イベントを開催する。

さらに、MUFG銀行傘下でスタートアップ企業を支援する関西イノベーションセンター(MUIC、大阪市)もCICへの入居を検討している。彼らの目標は、スタートアップに概念実証の試験やその他のビジネス支援サービスを実施する機会を提供することである。

価格面では、CICは最も安い選択肢ではありません。しかし、このコミュニティを十分に活用し、成長にコミットする準備ができている企業を求めています”

(取材:黒沢亜美)

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